マレーシア・ドライブ紀行③第8日目~10日目(カンポンブセラ、カパス島)
第8日目 1994年4月1日(金) 晴れ
本日の宿泊 カンポン・ブセラ La Chaumiere, RM15(¥600)朝食付、走行距離220km
メルシンからクアンタンへ向かう道路
カンポン・ブセラの浜辺
久しぶりに素朴な子供達の笑顔に出会った。
ここはカンポン・ブセラの浜辺。子供達が砂浜に大きくて深い穴を掘って遊んでいる。見ていると穴の大きさと深さを競っているだけのようだ。単純極まりないそのことに打ち込んでいる姿に、何か貴重なものを見つけたような気がした。ファミコンに熱中し、塾へ通う日本の子供達の姿が重なった。使っている道具は椰子の実の殻を割って作った「おわん」の形をした容器だけ。飽きもせず、自分達の影が長く伸びるまで遊び興じていた。
地元の子供たちと一緒に
そして、このカンポン・ブセラの砂浜がまた素晴らしい。目の前180度、エメラルドグリーンの海と白い砂浜が続く。にもかかわらず、誰一人として泳いでいない。5日間滞在したティオマン島の海もよかったが、自然の海という点では、このカンポン・ブセラの浜辺のほうが上のような気がする。
おりからの西陽を受けて、砂浜から波打ち際にかけて、椰子の木が長い影を落としている。その中に子供達の嬉しそうな声が飛び交う。遥か北方のゲラン岬の灯台に灯が入って輝き出した。
子供達の声がなくなった浜辺に再び出てみると、波は遥か沖のほうへ引き、濡れた砂浜が広がっている。その鏡のようになった砂浜の上に陸地の後ろに漂う夕焼けの色が反射して、紅色の絨毯を敷いたように見える。
何かが動く気配がするので下を見ると、そこいらじゅう、赤い絨毯の上をヤドカリや蟹が動き回っている。晩の食事を探しているのだろうか。それとも食後の散歩だろうか。こちらが少しでも動くと、その気配を察して、静かな絨毯に早変わりしてしまう。彼らは皆、穴の中だ。黙って立ち尽くしていると、再び彼らが動き回る。面白いので何回も繰り返した。
聞こえるものは、引き潮の波音だけ。オリオン座をはじめとする星々が姿をあらわし始めた。
ここへ来たのは偶然だが、どんな観光名所よりも心を満たすものを与えてくれた。子供達の笑顔とカンポン・ブセラの浜辺に感謝したい。
ゲストハウス La Chaumiere
ゲストハウス La Chaumiere の猫
※2002年9月に再度訪れたときには、カンポン・ブセラの宿 La Chaumiere には人はおらず、朽ち果てていた。
オーナーのフランス人女性は国へ帰ってしまったのかもしれない。前回、一緒に昼寝をした猫もいない。
私のマレーシアの宝のひとつである素敵な場所が消えてしまった。
(撮影日:2002年9月29日)
本日の宿泊 カンポン・ブセラ La Chaumiere, RM15(¥600)朝食付
心地よい海からの風が吹き抜けていく。隣の家から子供が叱られて泣いている声が聞こえてくる。黒猫もベランダの藤椅子の上で身体を伸ばしきって昼寝をしている。身体中、真っ青なキングフィッシャーが一羽、木々の間を飛びまわっている。波の音と風が椰子の葉を鳴らす音。カンポン・ブセラの土曜の午後。あまりにも去りがたいので、もう一泊することにした。
この庭をキングフィッシャーが飛び回っていた
朝7時前に浜に出た。東の空の下の方はあいにく雲に覆われていたが、陽の出とともに少し赤く色づいて見えた。引き潮の砂浜は太陽の光を受けて、昨晩と同じように赤い絨毯になった。宿のオーナーの話によると6時頃はもっときれいだったそうだ。明朝は是非早起きしよう。
昨日、砂浜で子供達の写真を撮ったが、今日も写した。あとで送るつもりだ。素晴らしい宝物をくれた彼らにささやかなお礼だ。
本日の宿泊 カパス島 Mak Cik Gemuk Beach Resort, RM10(¥400) 走行距離199km
7か月ぶりにカパス島へ来た。クアラ・ドゥングンからマランまでは海岸に並行して走る直線道路を景色を楽しみながら運転した。丁度、日曜日で人出もなく、ほとんど無人といってもいいような漁村をいくつも通った。
ブセラで朝食を食べていた時には、背中が朝陽に当たって、汗びっしょりになってしまうほどいい天気だったが、出発して暫くすると雨と道連れになった。12時過ぎにマランに着き、運良く1時に出発予定の船に乗ることができた。前に泊った所は、今日はがらがらに空いている。観光シーズンではないのだろうか。一番安いRM15の部屋をRM10にしてくれた。前回(昨年の8月末)はRM35の部屋に泊った。
午後、カパス島の浜辺で、去年4月26日にマレーシアへ来て以来、初めて蝉の声を聞いた。
(撮影日:2002年9月、マレーシア東海岸のカンポン(田舎)の様子)